学者が提唱する子どものゲーム時間は1日1時間!止めさせても意味はない『「学力」の経済学』
Photo:Addiction By Ben Andreas Harding
『「学力」の経済学』を読みました。
本書は教育経済学者の中室牧子さんによって、データを用いて教育経済学が明らかにした教育や子育てに関する発見について書かれた本です。データに基づいた根拠のある研究結果ですので、教育ママのアドバイスや著書より役に立ちます。
具体的な内容は「子供を勉強させるのにご褒美は良いのか」、「子どもは褒めて育てるべきなのか」といったことです。私には子どももパートナーもいませんが、上記に関してどちらが良いのかを耳にしたことくらいはあります。
そんな一度は聞いたことのある定説を裏付けたり、間違いを指摘しているのが本書です。
今回は私の好きなゲームに関する説、「ゲームは子どもに悪い影響があるのか」について触れていきたいと思います。
ゲームがなぜ悪影響と言われるのか
そもそもどうして、ゲームは悪とされているのでしょうか。
長時間ゲームをしてしまう
その一つに、ゲームをやり始めると長時間やってしまうという理由が挙げられます。
かの高橋名人も「ゲームは一日1時間」と言っていましたが、この名人の言いつけを守っている小中学生が少ないのではないでしょうか。
一度始めたら、自分の集中力が切れるまでどんどんやり進めてしまう。止め時は、お母さんの「ご飯できたよー」という声。小中学生の時にゲームをしたことある人なら、そんな経験何度もあるのではないでしょうか。そのようなご飯で呼ばれなければゲームを止めない様子を親が見ているから、ゲーム=悪というイメージが付いているのかもしれません。
その上、据え置きのゲームならリビングに置いてある家庭も多いと思うので、遊んでいる様子が親の目に入りやすい。それによって、プレイ時間以上に子どもがゲームをしている印象を与えているのかもしれません。
実際のデータを見てみましょう。
厚生労働省の調査によると、小学校高学年のテレビの視聴時間は平日に2.2時間。ゲームの使用時間は平日に1.1時間だそうです。学校から帰ってきてから寝るまでの時間を8時間と考えると、短くはない時間ですね。
ゲームの悪影響を受ける
二つ目は、ゲームの悪影響を受けるという昔からある説です。バカバカしいのであまり触れたくありませんが、暴力的なゲームをやると暴力的になるみたいです。
ゲーム脳と同じ匂いがしますが、一応挙げておきます。
以上、主にこの二つの理由から、子どもにゲームをさせないほうがいいと言われがちです。では、教育経済学の研究の結論はどうだったのでしょうか。
ゲームそのものは悪影響を及ぼさない
ゲームそのものが子どもに悪影響を及ぼすことは少ないようです。むしろ、子どもにとって良い影響のほうが多いようですね。
17歳以上の子どもが対象になるようなロールプレイングなどの複雑なゲームは、子どものストレス発散につながり、創造性や忍耐力を培うのにむしろよい影響がある
上記の研究結果はアメリカのデータですが、日本のデータを利用した研究でも問題行動や学習時間への悪影響は少ないという結果に終わったようです。
ただし、ゲームと学習時間の間には負の因果関係があります。当たり前ですがゲームの使用時間が増えれば増えるほど、学習時間は減っていきます。
では、ゲームを止めさせると学習時間は増えるのでしょうか。
ゲームを止めさせても学習時間は増えない
子供のゲームを1時間止めさせると、最大2.7分学習時間が増加するそうです。約3分です。ゲームを止めたとしても他の娯楽に流れるようで、あまり意味はないそうです。
確かに、私が子どもならゲームがダメならテレビ、テレビがダメなら漫画と流れますね。今は小学生でもスマートフォンを持つ時代ですから、昔よりも娯楽が増加しているのではないでしょうか。もし仮にすべての娯楽を断たれたとしても、勉強をする選択肢は生まれにくいと思います。
ゲームを禁止したところで、自発的に勉強するとは限りません。全くさせないのも逆効果です。
ゲームは1日1時間
1日に1時間程度のテレビ視聴やゲーム使用が子供の発達に与える影響は、全くテレビを観ない・ゲームをしないのと変わらない
ゲームは1日1時間、これが結論です。高橋名人の名言通りでした。ゲームのやり過ぎは悪影響ですが、ゲームを趣味としている子どもからゲームを取り上げるのも悪影響です。適度が一番です。
といっても、一時間でゲームを止めさせられたら苦労しません。どうやったら、止めさせられるのか。おまけ程度ですがちょっと考えてみましょう。
ゲームの使用時間を減らす方法
ひとつは、ゲームを勉強のご褒美にしてしまうことです。
本書では勉強後のご褒美の上げ方として、インプット後とアウトプット後ではどちらが効果があるのかという研究も載っていました。効果があった方法は前者です。研究の詳細は本書を読んでください。
インプット後というのは、要は机に向かったらご褒美をあげるということです。
例えば、一日30分勉強したら、1時間ゲームしてもよいというような感じですね。
ご褒美といえば「テストでいい点数を取ったらあげる」ことが一般的ですが、上記の研究では効果がありませんでした。ゲームばかりして勉強はしたくない子どもには、とにかく机に向かう習慣のほうが大切ではないでしょうか。
二つ目は、ゲームを義務化させることです。少し前にゲームを止めさせる方法として、ゲームの進行を親がタスク化したところゲームを止めたという経験談をどこかで読みました。「勉強しなさい」ではなく「ゲームしなさい」ということで、その家庭は上手く行ったようですね。
個人的には二つ目が面白いと思いますが、どの教育が合うのかは家庭それぞれです。一番は子どもの性格に合った方法です。
最後に
ゲームはやり過ぎなければ悪影響はないという研究結果は、ゲーム好きの私にとって喜ばしいことです。
「ゲームは1日1時間」は語り継がれるべき言葉として、これからも残っていってほしいと思います。