本なんて読まなくたっていいのだけれど、読んでみるのもいい
『本なんて読まなくたっていいのだけれど、』を読みました。著者は、ブックディレクターである幅允孝さんです。
ブックディレクターとは、日本語で言うと選書家。書店や病院、老人ホームの本棚など、その空間に合った本棚を作ったり相手に合った本を紹介したりと本を扱う仕事。
そのような仕事をしている幅允孝さんが、ブックディレクターという立場から本への思いを語ったエッセイ集です。
本を血肉化すること
この本を読んで、私が一番心を打たれた文章はこちら。
本を読むことは、数時間かけて空想の中を旅するだけではない。読んだ本の一文でも一言でもいい、ある言葉が読者の中に深く刺さり、血肉化し、日々の実際的な生活に作用することが大切なのではないかと僕は思っている。
(中略)
些末な、けれども毎日を形づくる積層の一部分に本が関わっていて欲しいのだ。
本を読むうえで重要な要素が詰め込まれています。
ビジネス書や自己啓発書を読むとしても、読んで満足してはダメです。様々な場所で言われていますが、本を読んで行動を移せるかが重要。
知識だけ蓄えても意味がないんですね。ただ、それができない人が多いから、この世にはビジネス書や自己啓発書があふれているのだと思いますが。
また、「本を読むことは、数時間かけて空想の中を旅するだけではない。」という文章から読み解くに、血肉化すべき本は実用書だけでなく小説にも及ぶようです。
小説を血肉化するのは難しいなと思っていたのですが、よく考えてみると簡単なのかもしれません。この血肉化は小中学生が得意なのですから。
意外と血肉化って簡単
「血肉化して、日々の生活に作用されることが大切」と聞くと、どうも難しく考えがちですが、小中学生が良くやる物語の主人公に影響されるのも一つの血肉化だと思うんです。
幼稚園児がアンパンマンを見て、困っている人がいたら助けてあげようと思うのも、小学生がスポーツ漫画を見てスポーツを始めるのも、中学生が主人公になりたくて厨二病を患ってしまうのも、ジョジョを読んで洋楽を聞いてみるのも。全部血肉化ではないでしょうか。
こう考えると、本を血肉化するのなんて簡単ですよね。ちょっとの変化でいいんです。
私は最近『ストレッチ(1) (ビッグコミックススペシャル)』を読んで、寝る前のストレッチを始めましたし、今こうして『本なんて読まなくたっていいのだけれど、』を読んでブログを書いています。
これも「些末な、けれども毎日を形づくる積層の一部分に本が関わっ」たのだと思います。
本を役立てるために、自分を大きく変化させようとすること自体間違っているのかもしれません。適当に読んでいたら、なぜか自分の中に深く刺さって気が付いたら行動も改めていた。これが理想かもしれませんね。
最後に
本との向き合い方が、ちょっとだけ変化した本でした。本とはガツガツ向き合わなくてもいいかなーなんて。自分に深く突き刺さった本のみと付き合っていきたいと思います。
ただ、そんな本はたまにしか出会えないわけで。もし出会えたとしても、タイミングが悪ければすれ違ってしまいます。人も本も出会いはタイミングが重要のようです。