のほほん感想録

本の感想や学んだことを主に書いてます。ビジネス書から小説、漫画までいろいろ読んでます。最近はゲームや株主優待も取り上げてます。

アニメ化した『甘城ブリリアントパーク』の1巻を読んだ感想

タイトル通り、現在放送しているアニメ『甘城ブリリアントパーク』の原作1巻を読みました。

 

甘城ブリリアントパーク 1 (富士見ファンタジア文庫)

甘城ブリリアントパーク 1 (富士見ファンタジア文庫)

 

 内容紹介

 謎の美少女転校生・千斗いすずから遊園地デートの誘いを受けた主人公の可児江西也。デートの場所は、ダメな遊園地と有名な「甘城ブリリアントパーク」だった。
その遊園地に連れてかれると、ラティファという本物のお姫様に引き合わされ、甘城ブリリアントパークの支配人になってほしいとお願いされる。支配人になった西也だったが、残り二週間で十万人を来場させなければ契約上潰れてしまう状況であった。

果たして、可児江西也は十万人を来場させることができるのか。個性的なキャラが織り成すコメディ遊園地経営シュミレーション。

 

作者紹介

作者は、フルメタル・パニックで有名な賀東招二さん。フルメタル・パニックは1000万部を超える大ヒット作で、本編は完結しましたが短編で今も連載を続けています。

 

 

感想(ネタバレ少しあり)

アニメでやっていて興味をもったので、原作の1巻を読んでみることにしました。

 

話としては、テンポが良くキャラも個性的な方々が多いので、読んでいて面白かったです。個人的には、アニメよりもこちらのほうが好きですね。アニメは、来場者数をクリアする設定を3ヶ月に延ばしているので、物語がダレている感じが否めません。3ヶ月に延ばしたことが裏目に出なければいいのですが。


つい内容紹介のところに経営シュミレーションなんて書いてしまいましたが、真面目に経営している感じがあまりないので、そこにリアルを求める人は合わないと思います。Amazonのレビューを見ていると、そこに拒否反応を示している人が多いですね。

 

あと、オチも批判されています。その理由はモヤモヤした解決方法になったからだと思いますが、人気のない遊園地に二週間で十万人を来場させるなんて普通できませんから、無理矢理な解決方法になるくらい予想出来ていたことです。

そこに文句をいうのは野暮ですよ。ライトノベルの主人公だって、たまには汚いことをしてでも解決させたいと思っているはずです。大目に見てあげようじゃないですか。

 

まとめ

ここまで書いていて思いましたが、オチもダメ、主人公の手腕で遊園地を立て直す設定も活かしきれていないってなると……あれ?面白い要素はどこに。

……きっとキャラに好感を持てたのでしょう!そうに違いない!

そんな感じで今日は締めます。

 

追記

続き読みました。

 

「人類は衰退しました」9巻 ついに完結!結末は予想外の方向へ!

やっと「人類は衰退しました」の9巻を読みました。読み始めてから終えるまで、一ヶ月程かかりましたね。

 

人類は衰退しました 9 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 9 (ガガガ文庫)

 

 内容紹介

月に行ったまま帰らぬ人となってしまったわたしちゃんの祖父。わたしちゃんは、祖父を助けるために妖精さんの力を借りて、月へ向かう準備をする。果たしてわたしちゃんは無事に月に行くことができるのか。そして、ついに語られる人類と妖精の歴史とは何なのか。どうして人類は衰退したのか。妖精さんとは一体何なのか。

様々な伏線が回収される最終巻、今まで追っていたのにこれだけ買ってない人は、読まなければ損では?

 

感想

ついに読み終わりました。読み終えるまでに一ヶ月かかりました。こんなに寝かせる予定はなかったのですが、いろいろな本を読んでいたらこんなにかかってしまいました。でも一ヶ月かけてでも読み終えることができてよかったです。むしろ一ヶ月かけたからこそ、終わるときには寂しい気持ちになったのかもしれません。

 

少しだけネタバレになりますが、無事ハッピーエンドになってよかったです。いや、この妖精さんが溢れている世界でバッドエンドになるのもどうかと思いますけどね。
メルヘンチックな感じなのに、誰も救われませんでしたみたいな。面白そうですけど、私の精神汚染が急激に進むので推奨できない終わり方です。

 

さて、感動の最終巻ということですが、今までの伏線のほとんどは回収されたのではないでしょうか。上にも書いたとおり、妖精さんとは何なのか、人類が衰退した理由は何なのか、影が薄い助手くんは何者なのか、など綺麗に畳んでいきましたね。
最初から読み直したら、私が気づいていない伏線も回収されているのを発見できるかもしれません。そういえば、わたしちゃんと助手くんの本名が書いてあったりもしましたね。こりゃ、もう一回9巻を読み返すほうがいいのかもなあ。それから最初から読み直していったほうが良さそうです。

 

あとがきを読んだところ、短編集が発売することが決定しているようですね。ただし、8巻から9巻が発売するまで1年4ヶ月かかっているので、短編集の発売は2年くらいかかってしまう予感。その頃には、この作品が合ったことは忘れられていないか心配です。原作は衰退しました、にならないように願っています。

 

いつ発売するかわからない短編集で期待しているのは、わたしちゃんと助手くんがくっ付くのかどうかというところです。未来から来たわたしちゃんが、助手くんの特徴を大胆なところと言っていましたから、そういう関係になるのかもしれませんね。9巻分もわたしちゃんの物語を読んだのですから、そこまで描写してくださいよロミオ氏。

 

 私の作品への熱が衰退するまでに、発売することを祈っております。

 

『校閲ガール』校閲者をテーマに描いたコメディ小説

宮木あや子『校閲ガール』を読みました。読もうと思った理由は、出版の校閲をテーマにした職業小説が珍しかったからです。

 

校閲ガール

校閲ガール

 

 内容紹介

ファッション雑誌の編集を目指して出版社に就職した河野悦子だったが、配属先は校閲部だった。校閲原稿と格闘する悦子だが、担当する原稿や作家など周りでは様々な事件やトラブルが起こっていく。

そんな校閲ガールの日常(?)を描いたコメディタッチの小説となっております。

 

ちなみに校閲とは

[名](スル)文書や原稿などの誤りや不備な点を調べ、検討し、訂正したり校正したりすること。「専門家の―を経る」「原稿を―する」
出典:デジタル大辞林

ということをする仕事です。意味を見るだけでも大変そうだと感じるお仕事ですね。

 

感想

読後感がスッキリしていて読んでよかったです。主人公の河野悦子の性格がサバサバしていて良かったのかもしれません。某ミッキーマウスの憂鬱のように、読んでいる最中にイライラすることがなく、「娯楽小説はこういうのだよな」と改めて実感しました。

全体的にコメディ色が強いので、いわゆるドタバタコメディというやつでしょう。女性が主人公ですが、特に男女関係でドロドロするわけでもなく、明るくテンポよく進むので飽きることはありませんでした。

 

 この校閲というお仕事ですが、上にも書いてあるとおり、原稿の誤りや不備な点を調べ、検討し、訂正したり校正したりします。この作業を本一冊分行うこともあるようですから、精神的にも肉体的にも疲労しそうなお仕事です。

これを行うことで私達の手元に文章の誤りなく本が届くのですから、感謝しなければいけませんね。だから誤字脱字を見つけたからといって、鬼の首を取ったように晒すのは止めましょう。

 

心に残った一文

ここで唐突ですが、この本を読んで良い文章だなと思ったものを紹介したいと思います。

これは、校閲の仕事をよく思っていなかった悦子が、自分なりの校閲という仕事の良さを見出したシーンでの一文です。

もし文章がヘタクソでも書かれていることが事実とは異なっていても、その内容が利益を生みさえすれば許されるとするならば、校閲なんて必要ないし、そもそも校閲という概念すら存在しなかっただろう。

 

これを読んで、私もブログではありますが、誰かに読まれるかもしれない場で文章を書きますので、正しくて美しい整った日本語を書いていきたいと思わせられました。

 

所詮ブログなんだから日本語が適当でも、とにかく書けばいいと考えていたりもしましたが、見てもらうからには読みやすくて疑問を抱かない文章のほうがいいですよね。今後も気をつけていきたいと思います。

 

今日はこんなところで終わり。

「野崎まど劇場」笑いが詰まったクレイジーな短編集

ネット上にあった将棋の話に惹かれて、「野崎まど劇場」を読みました。

独創短編シリーズ 野?まど劇場 (電撃文庫)

独創短編シリーズ 野?まど劇場 (電撃文庫)

 

 

内容紹介

対勇者用に魔王がダンジョンを構成する話や島民17万人が容疑者になった話など10ページ程度のギャグショートショートが24作も収録されており、作者も編集部も狂気の沙汰とは思えない「野崎まど劇場」。
一風変わった作品ばかりで人を選ぶが、作品の雰囲気が合うなら爆笑間違い無し!? 一家に一冊どうですか?

 

今日は気分を変えてPOP風に書いてみました。特に意味はありません。

 

感想

とても人を選ぶ作品だと思います。まるで小説の限界に挑戦したようなイラストや記号を使った表現方法が多かったので、「小説というのは文章のみで構成していなければ小説とは認めん!」というような人には、合わないでしょう。
独創短編シリーズという名の通り、表現も内容も独創的ですから、合わない人がいて当然だと思うんですけどね。まあ、好きな人は好きということで。

 

私がこの中で一番面白いなと思ったのは、「第60期 王座戦五番勝負 第3局」です。

この話の一部をネットで見て面白くて購入したほどですから、この作品だけでも200円位の価値はあります。「野崎まど 将棋」と検索したら、画像が出てくるので興味のある方は見てみてはいかがでしょう。
ただ、ショートショートという形式だということを考えると、見てしまうのは勿体無いかもしれません。見てほしいけど見てほしくないジレンマ。

ここまで書いて思い出しましたが、今日は第62期王座戦五番勝負第2局でしたね。偶然ですよ。

 

他にも「魔王」や「TP対称性の乱れ」が面白かったです。ネタバレを避けようとすると、内容の感想がほとんど書けないのが悲しいところですが、ひとつだけ言うならこの2つは声を出して笑いました。

 

頭を空っぽにして読むならピッタリの本です。次はknowを読んでみようかな。

「ミッキーマウスの憂鬱」ディズニーを舞台にする必要がなかった作品

「ミッキーマウスの憂鬱」という小説を読みました。面白いかどうかで言われたら、面白くありませんでしたね。

ミッキーマウスの憂鬱 (新潮文庫)

ミッキーマウスの憂鬱 (新潮文庫)

 

 

内容紹介

東京ディズニーランドで準社員として働くことになった21歳の後藤。ディズニーランドなんだから仕事も夢を見させてくれるに違いないと思っていたが、蓋を開けてみればどこにでもある会社と変わらない風景。
仕事に失望する後藤。でも頑張る後藤。頑張るけど初日からトラブルに巻き込まれる後藤。負けるな後藤!トラブルを解決して成長するんだ後藤!

 

秘密のベールに包まれた巨大テーマパークの〈バックステージ〉を描いた、史上初のディズニーランド青春成長小説。

私のあらすじではなにを言っているのかわからないと思うので、Amazonに載っていたあらすじも貼っておきます。

 

感想

この作品が好きな人には申し訳ありませんが、今回は文句しか言いません。

 

 

イライラさせられる小説でした。主人公はムカつくし、現実味はないし、ディズニーである必要があるのかどうかも疑問です。史上初のディズニーランド青春成長小説とか言うのならば、せめて事実を基にして欲しかったですね。

怒りが収まらないので、ダメだったポイント書いていきます。陥れようとしているわけではなく、けなしていれば好きなところが見つかったりするはずです。それを信じて書いていきます。

 

主人公がムカつく

この主人公の後藤くん、ムカつくんですよ。空気は読めないし、勘違い甚だしいし。怒りが収まらないのでちょっと見ていきますね。

 

まずは、仕事初日にセキュリティゲートで警備員に道を教えてもらった後のシーンです。

「ありがとう」後藤はそっけなく告げて、さっさと歩き出した。新入りであることを見抜かれて、なめられたくない。

いや、別になめられてもいいと思うんですけどね。それにディズニーランドをなんだと思っているんですか後藤くんは。

 

次に、キャストが着る制服について後藤くんが触れるシーンです。

「キャストが身につける服は舞台衣装と同じ。だからコスチュームって呼ぶんです」
「なんか、イメクラみたい」後藤は笑ってみせた。

これから自分が働く職場ですし、相手が働いている職場を悪く言うってどういう神経しているんですかね。せめてもう少し面白いジョークを飛ばしてくれたらよかったのに。

 

ここまで書いて、後藤くんが空回りをしている描写をしたかったんだなとわかってきました。ちょっと許した。
ですが、それにしても空回りすぎだと思うんですよね。正社員によく突っかかりますし。成人しているんだから、もう少し空回りを抑えて欲しかったです。読者が不快に感じるような小説にしていないと思うので、そこが残念でした。

 

現実味がない

正社員を悪く書いて、準社員を良く書くのはいいんですけども、ここまで極端に悪役にする必要あったかなと。典型的な悪役にするもんだから小物臭が酷い。ってか正社員をこんな風に描写していたらオリエンタルランドに怒られないんですかね。

と思っていたら、オリエンタルワールドって名前になっていました。なんだ、役員の小物臭が酷い会社なんてなかったんですね。良かった良かった。

 

あと現実味がない点で言えば、後藤くんが入社して3日の出来事にしては濃厚過ぎるし、後藤くんが成長しすぎです。1日目で仕事に絶望していたくせに、2日目の終わりにはとても真摯に仕事に取り組んでいますからね。せめて一ヶ月くらいないと、考え方って変わらないと思うんですけどね。

 

ディズニーじゃなくていいじゃん

最後の文句となりますが、ディズニーじゃなくていいんですよ。
「バックステージを舞台に~」なんて書いてありますけど、レビュー見たらディズニーの情報でフィクション入れ込んでいるらしいじゃないですか。ただディズニー人気にあやかりたかっただけなんじゃないですか?

バックステージを舞台にした割には、その舞台が活かされていないように感じました。非常に残念です。

 

舞台裏が読みたいなら

舞台裏目的で、この本を読むのならば「ディズニー こころをつかむ9つの秘密」をおすすめします。東京ディズニーランドの開業前から、マーケティングに携わっていた方が書いた本ですから、具体的なエピソードが多く載っていて面白かったです。

 

ディズニー こころをつかむ9つの秘密

ディズニー こころをつかむ9つの秘密

 

 

「人類は衰退しました」8巻の感想と拡張現実について思うこと

人類は衰退しました」の8巻を読みました。今までとは違って、まるまる1巻使った長編でした。

人類は衰退しました〈8〉 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました〈8〉 (ガガガ文庫)

 

 

内容紹介

前回、動くモニュメントによって崩壊してしまったクスノキの里は、救援物資と仮設住宅のせいで住人が働こうとせず、まったく復旧が進まないのでした。その里の状態に愛想を尽かした一部の住人は、他の里へ引っ越していくため、人口は激減。打開策としてアニメを作ったり、拡張現実を試してみたり様々なことをしていきますが、改善には向かわず、医者もいなくなりと問題は山積み。

わたしちゃんの祖父は、物好きの貴族に誘われて月に旅行に行ってしまいます。しかも月に行った宇宙船と音信不通になり、祖父は生死不明に。これらの問題を処理しきれずに、わたしちゃんは不眠症となってしまうのです。はたして、わたしちゃんの問題は全て解決することができるのでしょうか。

 

読んだ人には、半分くらい理解してもらえるあらすじ書きました。

 

感想

今までわたしちゃんは、省エネ主義かと思っていたのですが、不眠症になってしまうほど熱心に仕事をしていました。てっきりストレス社会は、現代だけだと思っていたのですが、衰退している時代にも存在しているようですね

この巻では、前作と同じように妖精さんが活躍することはあまりなく、人間さんが頑張る話となっているのですが、妖精さんによる劇は可愛いものでした。あー癒やされた。

 

この巻の最後は、宇宙船プロジェクトの機関から祖父の死を伝える手紙が来たところで終わっています。次回は月に行くようです。妖精さんパワーを使うのでしょうか。それとも人類が自分たちの力で月に行き、人類もまだまだ捨てたもんじゃないぞといった終わり方をするのでしょうか。次巻、最終巻!とても楽しみです。

 

この話はあらすじの後、妖精さんの道具によって拡張現実と夢の世界がごちゃまぜになってしまい、いつもの人退ワールドへと誘われるわけですが、この拡張現実は現在どこまで進歩してきているのでしょうか。

 

現在の拡張現実


London [through Google Glass] - YouTube

 

これはGoogle Glassの動画です。眼鏡をかけるだけでいろいろな情報を表示させられるのは、心が踊りますね。この動画を見る限り、あまり多くの情報は表示することはできないようですが、それでも様々な用途はあるでしょう。

 

例えばGPSから地図を表示したり、電車の時間を歩きながらチェックしたりできそうです。Siriのような音声操作ができるアプリケーションが使えるならば、ちょっとした検索もすぐにできそうですね。Google Glassで表示できる情報が多くなれば、スマートフォンが無くなって、スマートグラスなるものが流行るのかもしれません。

 

最近、携帯電話からスマートフォンへ通信機器が変化していきました。それによってコミュニケーションツールがメールからLINEへと変化していき、現代人はより迅速な意思疎通を求めているように感じます。そのため、GoogleGlassをかけているだけで、メールやSNSなどのやりとりができるならばスマートフォンより重宝されそうですね。もしかすると、スマートフォンが大幅に衰退していくかもしれません。外出時で情報を見る用としてタブレットが流行るかも。

 

ただ便利そうなGoogleGlassにも問題が多くありそうです。私が一番懸念しているのは盗撮です。スマートフォンでさえ盗撮が問題になっているのですから、かけているだけでカメラが使えるGoogleGlassは、重犯罪に使われてしまうかもしれません。まあどんな重犯罪に使われるんだと言われても浮かばないのですが。

 

 

もし消費者向けのGoogleGlassが発売されたらについて、少ない知識で考えてみました。GoogleGlassだけで、今までの道具とは違う用途をそれなりに考えられて期待ができるのですから、よりハイテクな道具が開発されたらどういった用途ができるものが発売するのでしょうか。どこでもドアも夢じゃないかもしれませんね。

「たったひとつの冴えたやりかた」少女とエイリアンの友情を描いた名作

「たったひとつの冴えたやりかた 改訳版」を読みました。少女とエイリアンの友情と勇気を描いたSF小説です。

 

たったひとつの冴えたやりかた 改訳版

たったひとつの冴えたやりかた 改訳版

  • 作者: ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア,浅倉久志
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/08/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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内容紹介

宇宙航海を夢見る16歳の少女、コーティーは誕生日プレゼントに小型宇宙船を買ってもらう。その宇宙船で未知の星々を求めて宇宙へ冒険に出ると、未知のエイリアン、シロベーンに出会う。種族の違う二人だが、それでも友だちになることができるのか。そして、コーティーの冒険の行方は。

 

簡単にあらすじを書きましたが、帯に書かれていたキャッチコピーも書いておきます。この小説の雰囲気を表していてとても良かったので。

 

生まれも、育ちも、種族さえちがっても、ともだちになれると思った。

 このキャッチコピーを見ていただければ分かるかと思いますが、ほろりとさせられるような感動できる一作です。批評家に「この小説を読み終わる前にハンカチがほしくならなかったら、あなたは人間ではない」と言わしめたほどですからね。

 

ちなみに今回私が読んだ本は、ハヤカワ文庫SFから出版された「たったひとつの冴えたやりかた」「グッドナイト、スイートハーツ」「衝突」の3編が収録された中編集ではなく、「たったひとつの冴えたやりかた」のみを収録した改訳単行本となっております。

 

感想

 前評判では泣けると聞いていたんですけど、まったく泣けませんでした。涙ひとつ出ませんでした。私には感情がないのでしょうか。それとも人間じゃない? いつの間にかエイリアンになっていたようです。

 

冗談はさておき、泣けなかった理由ですが、感動するというよりも虚無感が生まれてしまったんですよ。心にポッカリと穴が生まれてしまった感覚に襲われました。悲しいというよりも虚しいんです。コーティーのみに感情移入をし過ぎてしまうとこうなるのかもしれませんが。

読んだことがある人にはわかってくれると思います。同じ気持ちになりたい人は、さくっと読めるのでぜひ読みましょう!

 

ただ唯一残念なのは、「たったひとつの冴えたやりかた」しか改訳されていないところです。本来ならば三編あって一冊となるのに、一編しか収録されていないので、物語が欠落しているように感じました。「グッドナイト、スイートハーツ」と「衝突」も読めば、より一層面白くなりそうなのに勿体無いです。

やはり一編しか収録されていないのは、SFは苦手な人が多いからなのでしょうか。SFだけど有名な作品だから、とりあえずこれだけ収録して出版しようみたいな出版社の考えなんでしょうね。できれば全改訳版を出してほしかったです。

まあ、ここで要望出しても聞いて貰えそうにないので、素直に全訳版を読むことにします。ただ読みづらいみたいなんですよねえ。

 

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)

 

 

「九マイルは遠すぎる」論理的思考の面白さがわかる小説

「九マイルは遠すぎる」を読みました。一言でこの作品を表すならば、動かない探偵でしょうか。

九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)

九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)

 

 内容紹介

ネタバレ有りで書きますと、「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、ましてや雨の中となるとなおさらだ」という文章をだけを頼りに論理的な推論を用いて、前夜起きた殺人事件の真相を暴いてしまう話などが書かれている短編集です。

この短い文章からどのように殺人事件に繋げていくかの推論が、この本の面白いところです。ちょっとだけその推論を紹介したいと思います。

 

小説内に描かれる推論

「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、ましてや雨の中となるとなおさらだ」

 この文章から、まず主人公のニッキィは三つの推論を示します。

  1. 話し手はうんざりしている。
  2. 話し手は雨が降ることを予想していなかった。
  3. 話し手はスポーツマンや戸外活動家ではない。

1のうんざりしているは、わかるかと思います。歩き疲れている感じが伝わってきますね。

 

2の雨が降ることを予想していなかったことは、「ましてや~なおさらだ」と雨の中を歩いてきたことを強調しているからです。もし雨が振ってきたことを予想していたならば、「雨の中で九マイルもの道を歩くのは容易ではない」というのではないかという理由からです。

 

3のスポーツマンや戸外活動家ではないのは、九マイルもの道を歩くのは容易じゃないと言っているからです。この話し手は、雨の中を歩くことではなく、そもそも九マイルを歩くことが大変だと言っています。その理由は、あまり体を動かさない人間だからという推論です。

 

感想

と言った感じの話が続くのですが、この小説の面白さをわかっていただけたでしょうか。この一つのことから様々な推測をするのが好きな人には、ピッタリの小説だと思うんですよ。どうでもいいようなことでも、根拠をもって考えたいような人におすすめです。

具体例を出すと、最近一つの画像から様々な推測が出て話題になったものがありましたね。そう、ヱヴァンゲリヲンです。

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金曜ロードSHOWでエヴァQが終わった後に、少しだけ次回予告的な画像が写ったのですが、それが上の画像です。

これは、3.0+1.0ということで、Qの後を描く4.0ではないかという予想や、空白の14年間を描いてから序にループするのではないかという予想など、いろいろなことがネット上で書かれていました。

 

この予想をすることの何が面白いかって、自分の推論から基づく一つの考えを持って、それを他の人と語ったり、違う人の意見を読んで賛同したり否定したりすることだと思うんですよね。でも推論を人に言うには、それなりの根拠がなければ賛同してもらえませんし、ボロクソに叩かれてしまう可能性もあります。

 

根拠に基づいた説得力のある考えを作るには、適度な論理的推論が求められるでしょう。この自分の意見を構成するための論理的推論の面白さを描いたのが、「九マイルは遠すぎる」ではないかと思います。

 

論理的推論が何かを知りたい人や、論理的に考えることの面白さを知りたい人、推理小説が好きな人はぜひ読んでみてください。

『恋文の技術』読みやすくて面白くて阿呆な小説

森見登美彦の「恋文の技術」を読みました。相変わらずの森見節が炸裂している作品でした。

恋文の技術

恋文の技術

 

 

 内容紹介

大学院生の守田一郎は、教授の差金で能登半島の人里離れた実験所に飛ばされてしまう。話し相手が研究員の谷口さんしかいないため、寂しさのあまり文通修行と称して、友達、先輩、妹など様々な人物と手紙のやり取りを始める。友達の恋愛相談あり、先輩との喧嘩ありと様々なやりとりをしていくが、片思いの相手である人に対しては手紙をかけずにいる守田。果たして守田は片思いの相手に手紙を書けるのか!?

 

と簡単にあらすじを書いてみましたが、片思いの相手に手紙を書けるかどうかはそんなに面白さには関係ないですね。面白さは、ストーリーよりも登場人物のキャラクターによるものだと感じました。内容は、いつもの森見登美彦ですよ。

 

この小説は、その手紙を通して物語が進行していく書簡体小説です。主に守田一郎の手紙を通して話で進み、物語が動くのは手紙の相手側であるため、守田と一緒に話を楽しんでいく感じです。

友達との手紙では訳が分からなかったことが、先輩の手紙とを見るとわかっていく物語でもあるので、バラバラだった話が一つになっていくのも楽しめます。

 

感想

面白かったか面白くなかったかで言うと、とても面白かったです。コメディを描いているので、ふふっと笑ってしまったり、面白いなと思う箇所がいくつもありました。

心に残った場面を幾つか紹介していきます。

読書家ということだが、読んでいるのが森見登美彦ばかりというのは、いささか偏っているのではないか。

これは主人公が、友達の好きな人が森見登美彦ばかり読んでいる内容を受けての発言です。この人、いよいよ自分を自分の作品に出してしまっているんですね。しかも自虐的な感じで。

 これは作者からのメッセージなのかもしれませんね。こんな本を読んでおいて何が読書家だ、お固い本でも読んでおけ!みたいな。

それにしてもなぜ彼女たちはあんな人物の書くものが好きなのか理解に苦しみます

こんなことも書いていますからね。まあ好きなんで今後も読ませていただきたいと思いますが。

 

また、阿呆な小説ってタイトルに書きましたが、その主な理由はおっぱいという単語が何回も書かれているからです。多分200回以上書いてありました。なかなかないですよ、おっぱいについて語られてる小説。

 

読み終えて

この本を読み終えたときの感想は、まだ読んでいたかったと思えた作品でした。最後の章に入って、ページを一枚一枚めくっていくたびに、これで終わってしまうのかという寂しい気持ちをしみじみと感じていました。

 

この物語は、基本的に主人公の守田が書いた手紙の内容で話が進んでいくため、守田以外が話す機会はほとんどないのですが、手紙だけでも登場人物全員のキャラを理解できたうえに愛着が持てました。森見登美彦の登場人物って、一人ひとりクセがあって読んでいて楽しいです。

いつまでも読んでいたいと思える作品にもっと出会いたいですね。