「九マイルは遠すぎる」論理的思考の面白さがわかる小説
「九マイルは遠すぎる」を読みました。一言でこの作品を表すならば、動かない探偵でしょうか。
内容紹介
ネタバレ有りで書きますと、「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、ましてや雨の中となるとなおさらだ」という文章をだけを頼りに論理的な推論を用いて、前夜起きた殺人事件の真相を暴いてしまう話などが書かれている短編集です。
この短い文章からどのように殺人事件に繋げていくかの推論が、この本の面白いところです。ちょっとだけその推論を紹介したいと思います。
小説内に描かれる推論
「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、ましてや雨の中となるとなおさらだ」
この文章から、まず主人公のニッキィは三つの推論を示します。
- 話し手はうんざりしている。
- 話し手は雨が降ることを予想していなかった。
- 話し手はスポーツマンや戸外活動家ではない。
1のうんざりしているは、わかるかと思います。歩き疲れている感じが伝わってきますね。
2の雨が降ることを予想していなかったことは、「ましてや~なおさらだ」と雨の中を歩いてきたことを強調しているからです。もし雨が振ってきたことを予想していたならば、「雨の中で九マイルもの道を歩くのは容易ではない」というのではないかという理由からです。
3のスポーツマンや戸外活動家ではないのは、九マイルもの道を歩くのは容易じゃないと言っているからです。この話し手は、雨の中を歩くことではなく、そもそも九マイルを歩くことが大変だと言っています。その理由は、あまり体を動かさない人間だからという推論です。
感想
と言った感じの話が続くのですが、この小説の面白さをわかっていただけたでしょうか。この一つのことから様々な推測をするのが好きな人には、ピッタリの小説だと思うんですよ。どうでもいいようなことでも、根拠をもって考えたいような人におすすめです。
具体例を出すと、最近一つの画像から様々な推測が出て話題になったものがありましたね。そう、ヱヴァンゲリヲンです。
金曜ロードSHOWでエヴァQが終わった後に、少しだけ次回予告的な画像が写ったのですが、それが上の画像です。
これは、3.0+1.0ということで、Qの後を描く4.0ではないかという予想や、空白の14年間を描いてから序にループするのではないかという予想など、いろいろなことがネット上で書かれていました。
この予想をすることの何が面白いかって、自分の推論から基づく一つの考えを持って、それを他の人と語ったり、違う人の意見を読んで賛同したり否定したりすることだと思うんですよね。でも推論を人に言うには、それなりの根拠がなければ賛同してもらえませんし、ボロクソに叩かれてしまう可能性もあります。
根拠に基づいた説得力のある考えを作るには、適度な論理的推論が求められるでしょう。この自分の意見を構成するための論理的推論の面白さを描いたのが、「九マイルは遠すぎる」ではないかと思います。
論理的推論が何かを知りたい人や、論理的に考えることの面白さを知りたい人、推理小説が好きな人はぜひ読んでみてください。