『恋文の技術』読みやすくて面白くて阿呆な小説
森見登美彦の「恋文の技術」を読みました。相変わらずの森見節が炸裂している作品でした。
内容紹介
大学院生の守田一郎は、教授の差金で能登半島の人里離れた実験所に飛ばされてしまう。話し相手が研究員の谷口さんしかいないため、寂しさのあまり文通修行と称して、友達、先輩、妹など様々な人物と手紙のやり取りを始める。友達の恋愛相談あり、先輩との喧嘩ありと様々なやりとりをしていくが、片思いの相手である人に対しては手紙をかけずにいる守田。果たして守田は片思いの相手に手紙を書けるのか!?
と簡単にあらすじを書いてみましたが、片思いの相手に手紙を書けるかどうかはそんなに面白さには関係ないですね。面白さは、ストーリーよりも登場人物のキャラクターによるものだと感じました。内容は、いつもの森見登美彦ですよ。
この小説は、その手紙を通して物語が進行していく書簡体小説です。主に守田一郎の手紙を通して話で進み、物語が動くのは手紙の相手側であるため、守田と一緒に話を楽しんでいく感じです。
友達との手紙では訳が分からなかったことが、先輩の手紙とを見るとわかっていく物語でもあるので、バラバラだった話が一つになっていくのも楽しめます。
感想
面白かったか面白くなかったかで言うと、とても面白かったです。コメディを描いているので、ふふっと笑ってしまったり、面白いなと思う箇所がいくつもありました。
心に残った場面を幾つか紹介していきます。
読書家ということだが、読んでいるのが森見登美彦ばかりというのは、いささか偏っているのではないか。
これは主人公が、友達の好きな人が森見登美彦ばかり読んでいる内容を受けての発言です。この人、いよいよ自分を自分の作品に出してしまっているんですね。しかも自虐的な感じで。
これは作者からのメッセージなのかもしれませんね。こんな本を読んでおいて何が読書家だ、お固い本でも読んでおけ!みたいな。
それにしてもなぜ彼女たちはあんな人物の書くものが好きなのか理解に苦しみます
こんなことも書いていますからね。まあ好きなんで今後も読ませていただきたいと思いますが。
また、阿呆な小説ってタイトルに書きましたが、その主な理由はおっぱいという単語が何回も書かれているからです。多分200回以上書いてありました。なかなかないですよ、おっぱいについて語られてる小説。
読み終えて
この本を読み終えたときの感想は、まだ読んでいたかったと思えた作品でした。最後の章に入って、ページを一枚一枚めくっていくたびに、これで終わってしまうのかという寂しい気持ちをしみじみと感じていました。
この物語は、基本的に主人公の守田が書いた手紙の内容で話が進んでいくため、守田以外が話す機会はほとんどないのですが、手紙だけでも登場人物全員のキャラを理解できたうえに愛着が持てました。森見登美彦の登場人物って、一人ひとりクセがあって読んでいて楽しいです。
いつまでも読んでいたいと思える作品にもっと出会いたいですね。