結末を話してはいけない『ルビンの壺が割れた』の感想(ネタバレあり)
『ルビンの壺が割れた』を読みました。
なぜ読んだかと言いますと、どこかのブログにおすすめとは書いてあったからだと思います。
作品のあらすじは以下の通りです。Amazonより引用しています。
この小説は、あなたの想像を超える。
結末は、絶対に誰にも言わないでください。
「突然のメッセージで驚かれたことと思います。失礼をお許しください」――送信した相手は、かつて恋人だった女性。SNSでの邂逅から始まったぎこちないやりとりは、徐々に変容を見せ始め……。ジェットコースターのように先の読めない展開、その先に待ち受ける驚愕のラスト。覆面作家によるデビュー作にして、話題沸騰の超問題作!
では感想について書いてきたいと思います。
ちなみにネタバレありです。と言いますか、オチに関することしか書いていません。もし読むつもりの方がいらっしゃればご注意ください。あらすじには「結末は、絶対に誰にも言わないでください。」と書いてありますが関係ありません。
あと、感想は書きたいことを書いたので読みづらいです。
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『有頂天家族』狸と人と天狗の奇想天外な物語
森見登美彦『有頂天家族』を読みました。
読み終わってみると、なんだかよくわからない小説でした。
あらすじ
時は現代。下鴨神社糺ノ森には平安時代から続く狸の一族が暮らしていた。
今は亡き父の威光消えゆくなか、下鴨四兄弟はある時は「腐れ大学生」、ある時は「虎」にと様々に化け、京都の街を縦横無尽に駆けめぐり、一族の誇りを保とうとしている。
敵対する夷川家、半人間・半天狗の「弁天」、すっかり落ちぶれて出町柳に逼塞している天狗「赤玉先生」――。多様なキャラクターたちも魅力の、奇想天外そして時に切ない壮大な青春ファンタジー。
狸と人間と天狗の三つ巴を描いた小説です。まあ、三つ巴と言いましても殺伐としているわけではありませんが。
続きを読む『ぼくのメジャースプーン』読者の道徳を問う小説
辻村深月『ぼくのメジャースプーン』を読みました。
本書は、罰と救済の意味をいま現在に問う泣ける名作と出版社が謳っているように、感動できる作品です。ちょっと切ない小説です。
あらすじ
主人公の小学四年生、「ぼく」には力がある。「○○しろ。さもないと、××になる」という、命令させるか罰を与えるかという能力だ。
ある日、ぼくととても仲の良かった女の子、ふみちゃんが心の傷を負い感情を無くしてしまう。
学校で大事に飼育していたウサギがバラバラにされ殺されていたためである。その犯人は、動機がなく動物が嫌いだからやったと言う。
ぼくは、反省もしていない犯人が許せず力を使って復讐しようとするが、復讐の前に、同じ能力を持つ「先生」と7日間の授業を受ける。
復讐の答えを解く小説
この小説は、復讐をする力を得たときにあなたはどうする?という己の道徳を問われているように感じました。
この小説と同じように、身近な人が傷つけられ不自由な暮らしをしており、犯人は反省もせずに執行猶予がついて自由な暮らしをしている。
そんな状況に立ったとき、あなたはどうしますか。
何もしませんか?それとも復讐をしますか?
復讐をするなら、どのような呪いをかけますか?
この力は、相手ができることならなんでもできます。殺すことも可能です。
あなたはどうする?
主人公のぼくと私を重ね合わせながら読むと、先生に自分の道徳に対して説教されているように思えました。
先生と対話をする場面までは、内心ふつふつと怒りに燃えていたのですが、読み進めていくうちに、怒りよりも疑問が芽生えてきました。
正義ってなんだろう?
そんなことを考えていると、数年前に話題となったマイケル・サンデルの『これからの「正義」の話をしよう』が浮かんできました。やはり自分の倫理について問われているように感じます。
復讐には覚悟がいるし、その復讐方法も相手には効果がないかもしれない。復讐方法によっては、被害者と加害者の立場が変わる恐れもある。
そんなリスクのある行動を取る必要があるのだろうか。
主人公のぼくが、犯人への復讐をするための言葉が見つからなくなったと同時に、私も適切な判断は何か分からなくなりました。
今後、ぼくはどのような考えから判断を下すのでしょうか。また、ふみちゃんは感情を取り戻せるのでしょうか。
結末まで大事に丁寧に読んでほしい小説です。
あと読み終えた後に知ったのですが、『ぼくのメジャースプーン』は辻村深月の他作品ともリンクしています。
重要人物である先生は『子どもたちは夜と遊ぶ』の登場人物でもあるので、そちらから読んだほうがいいそうです。ただ、知らなくても楽しめました。
老人と海は「大人」向け小説
名作と呼ばれているヘミングウェイ『老人と海』を読みました。
これは、巨大なカジキマグロを釣り上げるために、老人が何日も船で頑張る話。
感想
私にはこの物語の面白さが分かりませんでした。
老人がカジキマグロを釣り上げるために何日も格闘した努力や、帰港途中に襲ってくるサメと闘う勇気というのは、評価されるものであり、そこが魅力でハードボイルド小説と呼ばれているわけだけど、私は面白いと感じませんでした。
この老人ほど仕事に対して向き合えていないからでしょうか? 人生経験が足りないからでしょうか?それとも、両方?
……なるほど、歳を取れば面白くなる物語とはこのような物語を指すんですね。「大人」向け小説と言えそう。変な意味ではなく。
なら年齢を重ね人生の折り返しくらいまで『老人と海』はしばらく寝かせる必要がありますね。
一度目には楽しめなくても二度目三度目は深みを持った味が出てくる、そんな作品なのかもしれません。
熟成するまでしばらく楽しみはとっておく、これも読書の楽しみってもんですわ。
とここまで書いて一つ疑問が。
面白く感じないのは、私が小説のアプローチを誤っただけなんでしょうか?
小、中学生が読んでも面白いと感じるのは難しいと思うのですが……もし感じたのなら、ぜひ楽しみ方を知りたいところ。
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』ふつうの青春小説ではない青春小説
桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を読みました。
タイトルだけ見ると、とても甘ったるい青春を描いた小説だと思えるのですが、実際はそんな甘い表現に包まれた残酷な物語です。
※物語の構成上、ネタバレ有りの感想
あらすじ
中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、一刻も早く社会に出て、お金という“実弾”を手にするべく、自衛官を志望していた。
そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑がやってくる。自分は人魚だと名乗り、不可解な言動を続ける藻屑に周囲は呆れ、なぎさも初めは無関心だったが、どこか魅力的な藻屑となぎさは接していくうちに序々に親しくなっていく。
藻屑の撃つ、妄想という砂糖菓子の弾丸になぎさは惹かれていたのだ。
だが、藻屑は日夜、父からの暴力に曝されており、ある日―。直木賞作家がおくる、切実な痛みに満ちた青春文学。
続きを読むデビュー作とは思えない!舞城王太郎『煙か土か食い物』
舞城王太郎の『煙か土か食い物』を読みました。
この本を読もうと思ったきっかけは、前に読んだ「密室殺人ゲーム王手飛車取り」が面白く、舞城王太郎の他作品も読みたくなったからです。
作品の特徴
疾走感がある作品だと言われています。
その理由は、改行、句読点がなく、主人公の独白がラップのようなリズムを感じる文章であること。そして、中盤から終盤にかけて物語の展開がとても早いことです。
ラスト150ページは、あっという間に終わります。小刻みに読むより、一気にラストまで駆け抜けることで疾走感をより味わえるのではないでしょうか。
でも、着地はゆるやか。スカイダイビングみたいな小説です。
オススメポイントはどこ?
腕利きの救命外科医・奈津川四郎に凶報が届く。連続主婦殴打生き埋め事件の被害者におふくろが?ヘイヘイヘイ、復讐は俺に任せろマザファッカー!故郷に戻った四郎を待つ血と暴力に彩られた凄絶なドラマ。
福井県の西暁町で起こった連続主婦殴打事件を通して、奈津川家の親子の確執、兄弟愛、そして家族愛を描いたミステリー小説。
あらすじを一言で言ってしまうと、こんな感じ。
ミステリーの要素よりも、奈津川家の家族関係を中心に描いているため、犯人探しが目的で読むなら、オススメはしません。
ならば、この小説のオススメポイントはどこでしょうか?考えてみますか。
主人公が魅力的なのか
主人公の四郎が超ハイスペックな人間で、アメリカでドクターやってて、何人も彼女がいて、事件の謎は、わずか2行ほどの超推理で解いて、喧嘩は超強い。
主人公が超人的スピードで謎を解いていくため、疾走感はあります。足止めを食らうこともなく、障害は全てぶっ壊して突き進むので爽快感もあります。
ただし、あまりにも四郎がハイスペックであるため、ハラハラ感はありませんでした。
地の文が良いのか
本書は、四郎の一人称で話が進みます。その独白が独特な点が面白いのかもしれません。
四郎の考えていることがセリフ以上に地の文に書いてあるので、四郎のキャラクターがわかりやすく、感情移入しやすいです。
例えば、あらすじに「ヘイヘイヘイ、復讐は俺に任せろマザファッカー!」と書きましたが、終始このノリです。これを受け入れられるなら、最後まで読めると思います。
あとは、地の文の疾走感ですかね。
何度も疾走感の言葉が出てくるので、おすすめポイントは疾走感だということで。
おすすめポイントは疾走感
この本の紹介文にもこう書いてあります。
破格の物語世界とスピード感あふれる文体で著者が衝撃デビューを飾った第19回メフィスト賞受賞作。
疾走感がオススメなんです。飽きずに最後まで読めます。
そもそも、こんな癖のある小説を私の稚拙な説明力で紹介すること自体が間違いでした。
読めば分かります。
就活生の現実 朝井リョウ『何者』
朝井リョウの『何者』を読みました。
この本は、就活をする現代の大学生をテーマに書かれた小説です。
朝井リョウといえば『桐島、部活辞めるってよ』など、少しクセのある物語を書く小説家ですよね。
『何者』もただの就活小説ではありませんでした。
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「甘城ブリリアントパーク 3」コメディ色が強くなった短編集
あらすじ
感想
まとめ
『甘城ブリリアントパーク』2巻を読んだ感想
『甘城ブリリアントパーク』の2巻を読みました。アニメでいうと5話、6話の話ですね。
内容紹介
前年度のゲスト入場目標はクリアした甘城ブリリアントパークであったが、次は人員不足と資金不足に悩まされていた。西也はまず人材不足を解消するために、新しいキャストを募集するが、癖のある人間しか面接に現れなかった。
資金の方も、キャストの給料すら払えない危機的状況であり、それを解消するために第二パーク予定地を売却しようとする。しかし、かつてキャストがいなくなったとされるほら穴が存在しており、売却の邪魔にならないか確認するために探索してみると、そこは地下迷宮であった。
果たして、資金不足は解消することができるのか。
感想
なんか、微妙でしたね。長編もののはずなんですけど、外伝を見せられている感じでした。
1巻よりも話のネタというか会話は面白かったんですけどね。ストーリーは面白いかと言われれば面白くないです。
1巻ほど山場もないですし、息抜きに書きましたよ、と言われても納得してしまうほどの適当さ。真面目に遊園地経営にする気はなさそうです。
1巻の感想を書いたときにアニメよりも原作のほうが面白いと書きましたが、2巻だけで言うと、アニメのほうが面白いですね。アニメを見て原作を買おうと思った人は、2巻を飛ばしてもいいのではないでしょうか。なんて、それは流石に言い過ぎかもしれませんが。
でもキャラは好き
ストーリーはボロクソ書きましたが、キャラクターは好きです。ほんとキャラはいいんですよ、キャラは。適度にラブコメの波動も感じる流れもありますからね。
だから、ストーリーを期待せずにキャラクター同士の絡みを楽しむつもりで読むなら面白いと思います。私は、期待しているものをその方向に変えました。そうすると、3巻も読んでみようかなという気にさせてくれるんですよ。
というわけで、3巻も読みます。決してまとめ買いをしてしまったからというわけではありません。それに、キャラクターを楽しむ内容だと思って読んでいれば、とても面白いので。
結論は、ストーリーよりもキャラ同士の絡みを求めると楽しめるライトノベルだということです。
追記
続き読みました。