『怖い絵』不気味な絵画の世界へご招待
本書のタイトルは『怖い絵』。そのタイトル通り、観て不気味だと感じる絵や歴史を知ると怖いと感じる絵など20作品が紹介されている。
以下、帯の紹介文を引用。
一見し合わせそうな家族『グラハム家の子どもたち』
……けれど、この絵の完成後?
キューピッドのキスを受ける豊満な裸体『愛の寓意』
……でもほんとは、このふたり?
このように、普通に見える作品も歴史や神話から読み解くと違った一面が見える、裏があることを本書は教えてくれる。
『グラハム家の子どもたち』の完成後……
一つだけ例をあげたいと思う。
帯に名前が出ている『グラハム家の子どもたち』は、この絵の完成後どうなったのかというと、末っ子のトーマスが病死してしまった。
それだけなら当時の日常で珍しいことではないのだが、トーマスの乳母車の飾りには羽ばたく鳥が描かれており、それは魂が肉体を抜け出す死の象徴を示している。
つまり、この絵はトーマスの死を示す予知絵になってしまった。
絵の背景に死の象徴を描くことはあるが、乳母車に死の象徴を描く必要はあったのだろうか。なぜ、羽ばたく鳥をわざわざ描いたのか。
その真相は作者のみぞ知ることだ。
というエピソードが『グラハム家の子どもたち』を怖い絵にしている。
ちなみに、表紙の作品はラ•トゥールの『いかさま師』であり、これも本書で解説されている。
『怖い絵』の魅力
本書の魅力は、著者による絵画の解説だ。
絵画に全く興味のなかった人のために、作家の生い立ちや絵画が描かれた時代背景、神を描くときのモチーフの解説など、事細かな説明が描かれている。
まるで著者が絵画の鑑賞方法を手取り足取り教えてくれているような印象を受けた。実際、私は絵画の知識はゼロ、世界史も疎い状態で本書に挑んだが、分かりやすく とても面白かった。
今まで絵画は全く興味がなく、美術館の存在理由を疑っていたほどの美術アレルギーだったが、これを機に美術の世界へ入門しようかと思わせてくれた。
この解説を隣でする人が美術館にいれば、きっと美術館も楽しめるはずだ。
しかし、その実現は難しいので、次はメジャーな絵画を解説した本を読んで、脳内ガイドを教育していきたい。
ということで、次は同じ作者の『名画の謎』シリーズを読もうと思う。最近『面白いほどよくわかる聖書のすべて』を読み聖書の名場面を学んだので、より楽しめるはず。
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