のほほん感想録

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『名画の謎 旧約・新約聖書篇』名画から聖書や歴史を知れる一冊

中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇

中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇

 

 

今回読んだ本は『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』。

『怖い絵』シリーズの著者であり絵画解説で人気の中野京子氏が、難解とされる宗教絵画を面白く紹介している。旧約・新約聖書の解説もあるため、それらを知らなくても楽しめるようになっている。

 

内容紹介

『名画の謎 旧約・新約聖書篇』は旧約聖書・新約聖書の有名な場面をピックアップし、さらにその場面を描いた絵画の有名どころを取りあげている。

これさえ読めば聖書をモチーフとした絵画は全てカバーできる、というわけではないが、本筋は知ることができる。

 

掲載している聖書のエピソードと絵画をざっくり書くと、アダムとイヴ一家・バベルの塔・アブラハム一家・イエスの誕生から再誕までとなっている。旧約・新約聖書のページの割合は同じくらい。

これらだけでも聖書を楽しむには十分だが、個人的には出エジプト記がなかったのが残念。モーセが海を割る絵画とか見たかった。

 

感想

本書の前に『面白いほどよくわかる聖書のすべて―天地創造からイエスの教え・復活の謎まで』を読んでいたので、聖書の復習と絵画の勉強を兼ね備えた有意義な読書となった。

『面白いほどよくわかる聖書のすべて』を読んでいたときには気づかなかった聖書の矛盾に、中野氏がちょくちょくツッコミを入れるので、聖書と絵画の説明以外も楽しめる。特に中野氏が女性ということもあり、聖書や絵画が描かれた中世の男尊女卑に対するツッコミはちょっと厳しい。

 

例えば、神がアダムを作るとき「土から作った」とあるが、イヴを作るときはアダムの肋骨一本から作っている。それに対して中野氏のツッコミは次の通り。

最初から女も「神に似た」姿で造られたというのなら男との対等感があるけれど、男の肋骨一本分しかないとわざわざ変更されたのは、明らかに後世の政治的社会的要請であろう(フェミニストならずとも「いかがなものか」と言いたい)。

男を土で造ったんだから女も土で造ればよかったものを、政治的な都合でお偉いさん方が聖書を弄ったので、筋の通らないエピソードが生まれた。

そのため、旧約聖書のみですら矛盾は数多く生まれ、唯一絶対神のヤハウェもどこか抜けているキャラになってしまった。

 

他にも、旧約聖書では人類初の殺人ということでカインがアベルを殺すエピソードが描かれているのだが、その原因は神はアベルの捧げ物には目を止めたのに、カインのには見向きもしなかったからだ。カインは、神に愛されたアベルへの嫉妬から殺してしまう。

この殺人のきっかけとなった自分の好きな捧げ物のみに目を向け、他には見向きもしない神の行動は自分本位にも思える。気に入らないのはわかるが、ちょっとくらいフォローしても良かったのではないか。大人気ないぞ。

 

しかし、このエピソードは敬虔な信者のみ神が見守ってくれるという教えにも捉えられる。アベルの捧げ物は上質な羊肉だったのに対し、カインは普通の農産物だったためだ。

だから、神はわざとカインに冷たくしたのかもしれない。

「もっと神のために精進しろよ」という神なりのエールだったのでは。ただ伝わらなければ意味がない。そういう教訓も聖書には含まれているのだろう。

 

さいごに

名画の謎 旧約・新約聖書篇」についての感想を書くはずが、聖書の感想になってしまった。それほど聖書のエピソードが興味深く、中野氏の説明も非常に面白かったということだろう。

絵画は、小説でいう挿絵だ。物語を知らなければ絵画を楽しむことは難しいので、絵画や画家の解説が丁寧なものがいいだろう。という点では、中野氏が書いた本がおすすめ。私が絵画に興味を持ったきっかけにもなった。

 

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