『燐寸少女』妄想を具現化するマッチ売りの少女
鈴木小波『燐寸少女』を読みました。
『燐寸少女』は表紙を見て面白そうだったので、その場で買ってしまいました。いわゆるジャケ買いです。ブログにも表紙を大きく載せてみました。
タイトルからはどんな話かさっぱり分かりませんが、表紙が独特の雰囲気を醸し出しているのがわかっていただけるかと思います。
あらすじ
ーー火が付いている間に思った妄想が具現化する「妄想燐寸」は要りませんか? ただし、妄想用であって願望用ではありませんーー。謎の少女リンが誘う少し不思議な日常。ココロざわつく寓話集を貴方へ。
表紙のジト目少女がリン。ストーリーテラーみたいな役です。
似ている漫画は、『アウターゾーン』だとか『Y氏の隣人』でしょうか。最近の漫画では浮かびませんでした。
感想
内容はあらすじにも書いてあるとおり、マッチの火がついている間に思った妄想を具現化するマッチをいろいろな人が使うことで、どのような展開になるのかという漫画です。
人によって妄想することは違い、自分に利益があるように使う人もいれば、他人に危害を加えるために使う人など様々。
登場人物の妄想に共感しながら読むのも良し、妄想から結末を予想するのも良しです。
結末は皮肉な終わり方もあれば、心あたたまる終わり方もあり、妄想を具現化させたからといってすべてがバッドエンドになるわけではありません。
このような自分の願いが叶う道具を扱う物語は因果応報エンドが多いので、たいてい主人公に災いが返ってきて終わることが多いですが、この漫画は上手いバランスで構成されていると思います。
ブラックユーモアに重きを置きすぎると、どうしても『笑ゥせぇるすまん』を相手にしなければいけませんからね。
個人的に好きな話
個人的には4話、8話、11話が好きです。
特に8話の竜宮城のヒエラルキーを崩壊させる妄想を具現化させたかった鯛の話は、冒頭からオチまでが面白くて好きです。
リンとクラゲが龍宮城に招待されたところから始まる時点で、読者を置いていっている感じがたまりません。鯛が踊りを失敗して食材にされそうになってから、その鯛を助けるために妄想燐寸を渡し、オチへの流れも面白かったです。
鯛も可愛いですし、鯛が絶望している顔も何だかそそるものがあります。
話だけでなく、キャラクターも魅力的なんです。
それに、リンちゃんのジト目可愛いし、クラゲくんも可愛いです。読者の心に傷を負わせない良いバランスです。
この作品のテーマ
燐寸少女のテーマは、妄想と深層心理はどちらを叶えると幸せになるのかというものでしょう。
妄想は所詮上辺だけのものなので、いくらでも心変わりするものです。
一方、深層心理は人の最も深いところにあるため、変わることはありません。
妄想で「金持ちになりたい」「楽にお金を稼ぎたい」と考えていても、深層心理は「働きたくない」と思っているのかもしれません。
そんな人なら、妄想燐寸で宝くじが当たっても、1巻の後半に出てくる深層心理の願いが叶うろうそくを使ったら、あっさり死んだりするかもしれません。死んだからもう働かなくていいよねというバッドエンドです。
ここまで書いてみて思ったのは、妄想も深層心理も叶えるもんじゃないですね。
身近なものの小さな幸せが、ハッピーエンドになるのかもしれません。
最後に
燐寸少女2巻の帯に映像化企画進行中と書いてあるので、近々アニメ化が発表させるのかもしれません。映像化はどうなるか分かりませんが、漫画はおすすめです。
『アウターゾーン』『笑ゥせぇるすまん』『週刊ストーリーランド』などが好きだった人は楽しめる作品です。