まんがでわかるピケティの「21世紀の資本」
トマ・ピケティが書いた『21世紀の資本』は世界で話題となり、日本でもベストセラーとなった著書です。しかし、21世紀の資本は700ページ超もあり、読破した人は少ないようです。
そこで、誰にでも読みやすく解説されている本はないかと探したところ、『まんがでわかるピケティの「21世紀の資本」』を見つけました。
難しい本を漫画で要約する流行りの「まんがでわかる」シリーズです。
ただ、今回扱った本が挫折者の多い『21世紀の資本』ですから
- 728ページもある『21世紀の資本』をうまくまとめることができるのか
- 21世紀の資本に書かれていることを、一人の社会人までミクロ化して描いても無理はないのか
これらに期待しながら読みました。
結果を書くと期待通りの本です。原書の訳者も本書に太鼓判を押しています。
今まで出ている各種のピケティ解説本の中で、素直かつ明快に『21世紀の資本』を説明しているという点では、本書はかなりの上位にくるはず。というか、そうなるよう監修いたしました……
21世紀の資本に興味のある人におすすめできる1冊です。
今回は、私が本書から学んだ『21世紀の資本』のごく一部を、書いていきたいと思います。
21世紀の資本の主張
21世紀の資本は、「高所得層や大企業が富を増やすと、低所得層にも富が流れ落ち、社会全体が潤う」というトリクルダウンを否定したもの。
現在日本が行っているアベノミクスの一つは、所得税や法人税を下げて大企業だけでなく、下請けといった中小企業にも富を流すというものですが、それを否定したとも言えます。
実際、大企業は春闘で例年よりも所得が増加する結果となり、それに中小企業も追随する形になるはずですが、中小企業からは悲鳴の声も聞こえてきています。
つまり、大企業から中小企業へ富が流れ落ちていないんです。トヨタがいい例だと思いますが、大企業が資本を増やす形になっています。
その理由は、ピケティの主張の核となる有名な式で説明できます。
有名な式である「r>g」
「r>g」
rは資本収益率、gは経済成長率です。
過去に蓄積された富は、労働で得る富より成長が早いため、富裕層との格差が生まれます。
私たちの生活に例えてみると、あくせくと何年も働いて給料が上がるよりも、まとまったお金で投資したほうが利益が出るということです。
具体的な数字を出すと、資本収益率は富裕国で5%あり、平均資本は2000万円とのことですから、単純に1年で100万円の利益が出ることになります。次の年には105万円の利益です。
一方、サラリーマンがこのペースで昇給することは現実的ではありません。
そして、これはひっくり返ることがないため、あくせくと働くサラリーマンは資産家に勝つことはなく、その差は広がる一方となります。
ピケティが主張する格差是正の案
この貧富の差が広がらないように、ピケティは政策介入することが必要だと主張しました。格差是正の現実的なものとして、累進所得税やインフレ、技術と知識の普及伝播です。
特に経済成長率の増加には、人口増加による市場の拡大と一人当たりの産出の成長率の増加が欠かせません。人口増加は今後難しいとされていますし、一人当たりの産出の成長率を高めることがカギとなります。
それを高めるためには、技術と知識の普及伝播が特に必要になるのです。
さいごに
「21世紀の資本」で書かれていることは国レベルのマクロな視点であるため、実生活に役立てることは難しいです。
真面目に働くのは止めて、資本収益率が平均5%なんだから、株やFXなど資本を持つという安直な考えでリスクを負う方向に走ってしまう人もいるかもしれません。「富裕層には勝てないから働かない」と、現代社会に絶望し、実生活に悪影響を及ぼす考えを抱くこともいるかもしれません。
しかし、ピケティはそんな悲観的な主張をしているわけではありません。「一人ひとりが現実を見て対応しよう」と格差への問題意識を現代人が持つことがピケティの一番の主張ではないかと思います。
まんがでわかるピケティの「21世紀の資本」 (まんがでわかるシリーズ)
- 作者: 山形浩生,小山鹿梨子
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2015/06/12
- メディア: 単行本
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